(0) 本ツールの概要
重ね梁の構造計算ツール。せん断キー(ラグスクリュー等)で接合された n 段重ね梁を対象とし、剛性増大率 C₀/C₁/C₂ に基づき、せん断キー、弦材曲げ・引張、継手位置の引張・せん断、たわみを総合的に検定。各検定は長期・短期積雪の2ケースで評価し、厳しい方を採用。書籍§2.8.3 P260-262 計算例を正誤表(R8.5.25)反映後の値で完全再現(C₀=5.42, C₁=5.09, C₂=3.41, 最大検定比 0.874〔書籍は中間値を丸めて 0.875。本ツールはフル精度で算定〕=短期せん断キー)。
📌 正誤表(R8.5.25)反映点:① 剛性増大率 C₀ = 1 + 1/((t₁+t₂)·nEI)(誤記の「+1/n」を削除:5.75→5.42)。② 継手位置せん断 jQⱼ 第1項分子 ΣWL = w·L²(6.29→8.98 kN)。これに伴い jQ, σ_t, jT, 各検定比が訂正値で算定されます。
(1) 全体フロー
入力(梁形状・荷重・材料・せん断キー・継手)から、① 弦材諸量 → ② 等価せん断剛性 Gp → ③ 中間変数 t₁,t₂,t₃ → ④ 剛性増大率 C₀,C₁,C₂ → ⑤ 中央モーメント M・せん断 Q → ⑥ せん断キー検定 → ⑦ 弦材曲げ・引張・複合検定 → ⑧ 継手引張 jT・継手位置せん断 jQⱼ 検定 → ⑨ たわみ検定 → ⑩ 描画。
(2) 弦材諸量(各層 積層厚 hᵢ を許容)
Aᵢ=b·hᵢ, Iᵢ=b·hᵢ³/12, Zᵢ=b·hᵢ²/6
H = Σhᵢ − h₁/2 − hₙ/2(上弦・下弦の図心間距離。全層同一なら (n−1)·h)
ΣEI = E·ΣIᵢ(全層同一なら n·E·I), Σ(1/EA)=1/(E·A₁)+1/(E·Aₙ)(上下弦のみ)
積層厚を層ごとに変えると、合成曲率を共有するため曲げ応力 σ_b,ᵢ=α·M·(EIᵢ)/(C·Zᵢ·ΣEI)=α·M·hᵢ/(2C·ΣI) は厚い層ほど大きくなります(②は最厚層、④複合は下弦材で評価)。引張 σ_t=(1−1/C₀)·M/(H·A_下弦) は下弦材断面で評価。C₀/C₁/C₂・たわみは ΣEI と上記 H で算定します。
(3) 等価せん断剛性
Gp = H/((n−1)·s)·ks
(4) 中間変数
Σ(1/EA) = 2/EA(上下弦のみ加算)
t₁ = Σ(1/EA)/H²
t₂ = 600/(61·Gp·H·L²)
t₃ = 60·(L+2ℓ)·(5L²−4ℓ²)·(L−2ℓ)²/(61·Kj·H²·L⁶)
(4b) 継手剛性 Kj(参考文献 P259 準拠・自動算出)
K₁ = Eb·Ab/ℓb (ボルト軸剛性)
ke = E/(10.9·bw + 31.6) (面圧剛性, E=弦材ヤング係数)
K₂ = ke·bw² (端部座金めり込み剛性, Aw=bw²)
Kj = (1/K₁ + 2/K₂)⁻¹ (両端座金 ⇒ 2/K₂ を直列合成)
書籍計算例(M16 L=750, 角座金60mm, スギE70 E=6.9): K₁=42.91, ke=0.0101, K₂=36.23 → Kj=12.74 kN/mm。「手動入力」を選ぶと任意値を直接指定可。
(5) 剛性増大率 ★正誤表R8.5.25反映
C₀ = 1 + 1/((t₁+t₂)·nEI) [正誤表:誤記の「+1/n」を削除]
C₁ = C₀ − 1/n [継手ピン仮定 (2.8.2-8)]
C₂ = 1 − 1/n + 1/((t₁+t₂+t₃)·nEI) [継手剛性 Kj 考慮 (2.8.2-9)]
継手なしでは曲げ・引張・たわみのすべてに C₀ を用いる(C₁・C₂ は継手ありの場合のみ算定し、検定では N/A 表示となる)。継手ありでは曲げ・たわみに C₂、引張に C₀、継手引張に C₁ を用いる。
(6) 中央応力・せん断(荷重ケース別)
w = w_area × p[m](短期積雪 wS/長期 wL), M = w·L²/8, Q = w·L/2
各検定は短期積雪(wS, 係数kS)と長期(wL, 係数kLb/kLr)の両方で算定し、検定比の大きい方を採用。
(7) ① せん断キー
jQ = (1−1/C₀)·(s/H)·Q ≤ qu·k (短期積雪 k=1.6/3)
(8) ② 弦材曲げ (2.8.2-4)
σ_b = α/(C·n)·M/Z ≤ Fb·k(継手あり C=C₂、なし C=C₀)
(9) ③ 弦材引張 (2.8.2-5)
σ_t = (1−1/C₀)·M/(A·H) ≤ Ft·k(最外層のみ)
(10) ④ 弦材複合 ★許容応力度に継続期間係数
σ_b/(Fb·k) + σ_t/(Ft·k) ≤ 1.0
Fb, Ft は基準強度。許容応力度=基準強度×k(短期積雪1.6/3, 長期1.1/3)。
(11) ⑤ 継手引張 (2.8.2-10)
Mj = w·(L²/8 − ℓ²/2)
jT = (1−1/C₁)·Mj/H ≤ min(tsa, twa·k)
(12) ⑥ 継手位置せん断 ★正誤表R8.5.25反映(計算例の式)
jQⱼ = w·L² / (4·(n−1)·C₂·ℓ') + (1 − 1/(C₂ + 1/n))·w·ℓ ≤ min(qwa·k, qba)
正誤表:第1項分子 ΣWL = w·L²(書籍初版の値6.29kN→8.98kNに訂正)。座金めり込み qwa には継続期間係数 k を乗じる(短期積雪1.6/3, 長期1.5/3)。なお一般式(2.8.2-11) jQⱼ=w(2L+ℓ')²/(32(n−1)ℓ') とは別に、計算例の式を採用。
(13) ⑦ たわみ
δ = 5·wd·L⁴/(384·nEI·C) ≤ L/制限比 (×変形増大係数。継手あり C=C₂、なし C=C₀)
(14) 単一断面相当(弦材幅 b 固定)
剛性等価: H_eq_EI = h·(n·Cb)^(1/3)
強度等価(複合検定基準): Z_eq_Z = 1/[α/(Cb·n·Z) + (1−1/C₀)·Fb/(A·H·Ft)], H_eq_Z = √(6·Z_eq_Z/b)
(15) 正誤表(令和8年5月25日更新)の反映
本ツールは『木造軸組工法中大規模建築物の許容応力度設計2024年版』第1版 正誤表(R8.5.25)の §2.8.3 計算例(P260-261)に関する訂正 No.7〜17 を全て反映しています。
・No.7 C₀:5.75 → 5.42(式から +1/n を削除)
・No.8 C₁:5.42 → 5.09
・No.9 jQ:4.710 → 4.649 kN、No.10 検定比 0.886 → 0.875(本ツールはフル精度算定のため表示は 0.874)
・No.11 σ_t:1.488 → 1.469 N/mm²、No.12 jT:30.292 → 29.843 kN
・No.13 jQⱼ:6.29 → 8.98 kN(第1項分子 ΣWL=w·L²)、No.14 検定比 0.589 → 0.842
・No.15 長期jQⱼ:4.005 → 5.719 kN、No.16 検定比 0.401 → 0.572、No.17 0.329 → 0.470
参考文献: 木造軸組工法中大規模建築物の許容応力度設計2024年版 §2.8(蒲池式)+ 同 正誤表(令和8年5月25日更新)/ 蒲池健・稲山正弘・井上雅文「木造組立梁設計法 ―多層複合梁の梁トラスモデルによる解法 その1―」日本建築学会構造系論文集 第74巻 第638号, pp.691-700 (2009)